【債務承認弁済契約公正証書作成の意義】

 

債務承認弁済契約公正証書は、例えば、貸した金銭の返済が滞っている場合、不法行為等によって慰謝料の支払が必要な場合等において、どのようにこれらを返済していくかを当事者の合意のもと公正証書にしておきたいときに作成します。

 

具体的には、(1)債務承認日における既存の金銭債務の存在を承認し、(2)その債務の履行方法を中心に公正証書で作成します。

 

そして、その債務承認弁済契約公正証書が「金銭の一定額の支払を内容とする公正証書で、かつ、債務者(=既存債務を承認し、弁済する者)が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(=強制執行認諾文言)」であるときは、債務名義となり、執行力を有するとされます(このような公正証書を「執行証書」といいます。)。

 

これにより、判決又は調停の手続を経ることなく、公証役場で比較的短期間で債務名義を取得することができます。

 

ただし、公証役場で公正証書を作成する場合には、債権者債務者間で合意ができていることが前提となり、争いがある場合には、裁判所で判決手続又は調停手続で債務名義を取得する必要があります。

 

特に裁判所での本格的な手続は、敷居が高いと感じられ、かつ、債務承認弁済契約の内容に関して債権者債務者間で合意できるのであれば、公正証書で作成することは、非常に有益といえます。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【公証役場】

 

公証役場とは、国の公務である公証事務を担う実質的意味の公務員である公証人が国から給与、補助金等の金銭的給付を一切受けず、国が定めた手数料収入によって運営される事務所のことをいい、全国約300箇所あります。

 

都心部の公証役場であれば、駅前の商業ビルの一室等に存在し、訪れやすい場所にあることが多いといえます。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【公証役場の管轄】

 

債務承認弁済契約公正証書を作成する場合の管轄については、債権者及び債務者の住所とは関係なく、全国のどの公証役場で作成しても構いません。

 

例えば、九州に住む債権者が東京の公証役場に訪れ、その公証役場で債務承認弁済契約公正証書を作成することは、可能です。

 

ただし、将来、債務者が不払いに陥った場合に、裁判所に強制執行の申立てをするときは、債務承認弁済契約公正証書を作成したその公証役場で「送達」及び「執行文の付与」を済ませる必要があり、注意を要します。

 

なお、債務承認弁済契約公正証書を作成する場合には、公証人の出張が原則として認められていないため、特別の事情がない限り、公証役場で作成することになります。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【作成日当日に公証役場へ赴く当事者】

 

債務承認弁済契約公正証書を作成する場合には、基本的に債権者及び債務者の双方が一緒に公証役場へ赴く必要があります。

 

ただし、日中仕事がある、遠方に住んでいる、顔を合わせたくない等を理由として代理人により公正証書を作成することも認められています。

 

その場合、代理人を立てることを希望する当事者から代理人に対し、委任状及び印鑑証明書を交付し、代理人は、これを公証人に提出した上で公正証書の締結を代理することになります。

 

ただし、公正証書の内容によっては、代理人による締結が認められない場合があるため、代理人を立てて、公正証書を締結する場合には、実際に嘱託する公証人にその可否を問い合わせる必要があります。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【交付される公正証書】

 

公正証書作成が完了すると公証人から正本が債権者へ、謄本が債務者へそれぞれ交付され、当事者及び公証人が署名押印した原本は、作成を行った公証役場で長期間保管されることになります。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【公証人手数料】

 

公証人手数料は、作成する債務承認弁済契約公正証書の内容により、その金額が変わってくるため、初めの段階では、その額は、判明せず、公証人から証書の案文(=当日作成予定の公正証書の原案)が届いた段階でその額が判明することになります。

 

公証人手数料は、公証役場で公正証書を作成した時点において、現金で支払います。

 

なお、公証人手数料は、「公証人手数料令」という客観的な基準に従い算定され、公正証書の作成は、「公務」と評価できることから、恣意的に手数料を増額したり、減額したりすることはできないとされます。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 


 

【強制執行の流れ】

 

強制執行認諾文言付の債務承認弁済契約公正証書により強制執行をする場合、予め「送達」及び「執行文の付与」の手続が必要になります。

 

(1)送達

送達には、「郵便による送達」及び「公証人による交付送達」の2種類があります。

A.「郵便による送達」

債務者本人が出頭せず、代理人で公正証書を作成した場合等において、郵便により送達を行う方法です。

B.「公証人による交付送達」

これは、公正証書作成のために債務者本人が公証役場に出頭したときに限り、公証人が債権者の面前で債務者に謄本を手渡しすることで、送達手続を終えたものとみなすとする方法です。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 

(2)執行文の付与

送達を受けた上で、公正証書の正本を所持する債権者が原本を保存している公証役場に出向き、執行文の付与を受ける必要があります。

 

執行文の付与には、(1)単純執行文、(2)事実到来執行文及び(3)承継執行文の3種類のものがあり、具体的には、下記のとおりとなります。

 

なお、債務の期限が確定期限である場合は、その期限前に執行文を付与することが可能であり、債務者に交付送達していたときは、公正証書作成と同時に執行文を付与することが可能です。

 

(1)単純執行文

⇒事実到来執行文及び承継執行分以外の執行文

(2)事実到来執行文

⇒請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合であって、債権者がその事実の到来したことを証明した文書を提出したときに付与される執行文

(3)承継執行文

⇒債権者又は債務者に承継があった場合に付与される執行文

 

公証人が執行文を付与しても差し支えないと判断したときは、公正証書の正本の末尾に、「甲は、乙に対し、この公正証書により強制執行できる。」旨の文言が付されて返却されます。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿

 

 

(3)強制執行の申立て

強制執行そのものは、公証役場では行えず、債権者が執行文の付いた公正証書正本、送達証明書等の必要書類を揃えた上で地方裁判所へ赴く必要があります。

 

 

債務承認弁済契約書作成@新宿